研究室選びをしている3年生に向けて、長坂研OB・OGの方々からメッセージをいただきました。普段、なかなかお話を聞くことの出来ない社会の第一線で活躍している先輩方に、当時の研究室生活が現在の仕事などにどのように役立っているかを聞いてみました。皆さんの研究室選びの参考になれば幸いです。

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.長坂研には“妥協しない”というある種の共通理念があると私は感じていました。学会発表練習や論文執筆等では先生や先輩に多くのアドバイスをもらい、より良いものを作り上げていこうとする文化があります。このような雰囲気の中で自然に身についた精神は、社会の中で役に立っていると感じます。分かりやすい説明をする・分かりやすい資料を作成するということも習慣づいています。
研究室で得た“知識”が社会で直接役に立つ人は少ないと思います。ものの考え方、壁にぶつかったときの対処の仕方そして精神的な粘り強さなど、研究に真剣に取り組むことで得たものが社会で役に立っています。

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.気になった研究室があれば、見学に行く・先生に会いに行くなどしましょう。直に体験し感じることが大切です。周りに流されず、自分の直感を大切にして下さい。

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.長坂研は国内・国際学会に参加する機会が多く、また一般の方に向けたテクノモールにも出展しています。これらを通じて「相手の知識や期待に合わせて話す能力」が身につきました。例えば、テクノモールでは身近な例を使ってわかりやすく説明するように心がけますし、専門家が集う学会では成果を数値や他の研究との差別化を示して興味をひくなど、相手の理解や興味を得るために異なったアプローチが必要となります。同様に、会社では部署が違うとルールや知識量が違うため、長時間にわたって綿密な確認を重ねますし、上司には手短に要点をまとめて報告するようにしています。まだ入社2年目の半人前ですが、長坂研で身につけた「臨機応変に話す能力」は円滑なコミュニケーションと業務遂行に役立っていると日々実感しています。

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.私は熱流体システムの授業が好きだったので熱関係の研究室に絞って研究室を選びましたが、決め手となったのは長坂研究室の雰囲気が気に入ったことでした。「百聞は一見にしかず」です。気になる研究室があったら気軽に足を運んでみて下さい。ちなみに16時頃のお茶の時間に見学に行くといいことがあるかもしれません☆

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.現在は携帯電話に搭載される半導体の熱設計を担当しつつ、様々なシステムの冷却設計技術を開発する部署を取り纏めていますが、長坂研究室の横串となっている、熱物性に関する知見や非接触計測技術のような、数値解析に乗る前のファンダメンタルな情報を得るためのアプローチが、R&Dの舵取りに役に立っています。企業の研究所において、目先の技術開発を担当するだけなら、学位の有無は、あまり問題になりません。しかしながら、取得することによって社会的な信用が得られること、その過程で、自らの研究を体系的に捉え直すことによって今よりも遠くが見えるようになるということ、人とのつながりが広がることが、結果として、自分のキャリアにも、所属する企業の活動にも、プラスに作用しています。

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.エンジニアリングの基本は、ハードであれソフトであれ、物理法則に基づいて何かを創るということですが、世間は案外狭く、自分が思いつくようなことは、他の誰かが同じように考えているものです。そのようなとき、大学で地に足のついた研究をしてきたか、いろいろな分野にアンテナを向ける経験をしてきたかが、差別化の重要なポイントになります。

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.学生時代に研究を通じて気付いたのが,世の中がいかに不完全なものだけでできているかということ。これは工学に限ったことではないけれど,その時代時代で,そのとき持っている技術と知識と能力で最大限のことをやっているにすぎない。例えば1970年代に開発されたスペースシャトルは当時の最先端技術の結集だけど,実は耐熱&断熱設計で回避できない致命的な欠陥があったことがその30年後になって最悪の形で明らかになった。結局NASAはこの技術の不完全性を認め,次期月有人ミッションではアポロ時代の方式で開発がすすめられている。つまり今の世の中を取りまくハード,ソフトのどれもが「突っ込み所」が満載で,そこを突っ込んで「より良い(であろう)モノやコト」を作っていくのが次の世代の人間の役割なんだと思う。どこをどうやって突っ込むか,どれだけたくさん突っ込むか,どれだけ深く突っ込むのかは個人の性格と能力が決めること。  
  自分の話をさせてもらうと,大学時代はとにかくアイスホッケーやらバイトやらデートやらが忙しすぎて勉学にまで手が回らなかった。研究室に配属されてからもたくさん残った授業やら大学院の試験勉強やらで研究どころではなかった。そもそも研究というもの自体に興味がなかったし,研究者の道を志す予定も全くなかった。ところが院試が終わっていよいよ研究を始めてみると,世の中は正解のない問題であふれているということに気づいて,これなら自分なりに何かしら突っ込めるのではないかと思ったり,簡単な理論計算をするときもついこの前院試で勉強した知識が使えたりして,ようやく勉強することの意味が理解できて研究がすごく面白くなってきた。もともとのめり込みやすい性格のせいか,大学院に進んでからは授業もプライベートもそっちのけで研究に没頭して,なんやかんやで今に至ります。  
  で,質問の「社会でどう役立っているか?」に関しては,卒論のテーマがそのまま今の仕事に直結しているので,知識も研究のアプローチもすべてが役に立っております。現在は日米の宇宙研究機関で研究させていただいておりますが,そこで新しい技術を習得したり新しい技術を創出していくためには,学生時代に「研究」というものに対して全力でぶつかった成功&失敗経験や学んだ知識や先生方とのディスカッションなどで学んだ思考⇔試行プロセスが基礎になっています。なので次にやるべきことに実験が来ても解析が来ても何も恐れることはないし,学術として確立されていない(つまり教科書すらない)未知の領域に足を踏み入れてもアレコレ自論を展開できるだけのメソドロジーが身についています。  
  それよりもなによりもありがたいのが,いろんな壁にぶつかるたびに(私はこれが多い)親身になって相談に乗ってくれる長坂先生と田口先生(後輩だけど)と宇宙研の大西先生の存在。このお三方には本当に頭が上がりません。あとは研究室時代の同期。彼らと過ごした研究室生活は本当に楽しかった。今でも事あるたびに集まるけど,学生時代は何者でもなかった彼らがいろいろな方面に進んで,会うたびにスケールアップしていくのを見るのはとても刺激になります。

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.大学2年のときの長坂先生の授業「熱力学同演習」が分かりやすくて面白かった。それだけの理由で長坂研を希望しました。もしあのとき長坂先生がつまらない授業をされていたら別の研究室を選んで今ごろ別の道を進んでいたと思います。つまり人は誰にどのタイミングで出会ってどう感化されてどうなってしまうかなんて予測不可能なので,あまり深く考えずとりあえず興味が持てそうな所を選びましょう。そして自分の向き不向きを省みず,思ったことを全力で取り組んでみるといいと思います。本気出してもできないことのほうが圧倒的に多いことに気づいて「根拠のない自信」を喪失するという経験は早いほうがいいです。全力でやったけど失敗したり怒られたり恥をかいたりしながら,そんな中でやり遂げられたことが本当の自信につながるのだと思います。

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.まず、日々新しい発明・技術に触れる機会の多い弁理士としては、比較的早く技術の理解ができるという点では、個人的に役立っております。
これは、長坂研で学んだ最大のことが、「物事に対する取り組み方」だからだと感じております。
そして、「課題を見つけ、解決方法を考え、研究を進めていく」ことや、「研究室の仲間と議論をし、多面的に物事をとらえる」ことを学べた研究室生活は、弁理士に限らず色々な職業において有意義なことであると、多くの研究室OBが実感していることと思います。
私の研究生活を例えるなら、コンピュータのOSのようなものだと思っています。「NAGASAKA 2002」というOSを積んでいるからこそ、社会に出て様々なアプリケーションソフトがうまく起動していけているのだと思います。

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.研究室選びは非常に悩ましいと思います。どの研究室であっても、自分の希望の研究テーマができるとは限らないし、逆に、研究をはじめてみてその魅力を感じることも多いと思います。
1年以上を過ごす場所なので、研究テーマも勿論大事ですが、先生の人柄や研究室の雰囲気・環境といったものを総合的に判断して選ぶといいかと思います。
そういった点では、研究テーマを含め、長坂・田口研はお薦めの研究室です。

Q.長坂研での研究生活は、卒業後、社会の中でどのように役立っていますか?

A.研究活動というのは、詰まるところ仮説・検証サイクルの繰り返しだと考えています。私は現在経営コンサルティングの仕事に従事していますが、限られた時間の中「よい仕事」をするための要諦は、高スピード・高精度の仮説・検証サイクルを何回回せるかということに尽きます。その意味で、長坂研での研究活動プロセスは、今の私を作り上げてくれたかけがえのないものです。
また、長坂研で欠かせない要素として、極めてレベルの高い輪講*が挙げられます。ビジネスでは、物事を「考える力」、そして「伝える力」が掛け算で利いてくるものです。私にとって、「考える力」を鍛えられたのが、前述の研究活動だとすれば、「伝える力」は、まさにこの真剣勝負である輪講の中で培われたものです。
研究室時代の友人や先後輩と話す際は、当時と最も離れた飛び地にいると指摘される私ですが、むしろ、私こそ研究生活からの学びを最も活かしているのではないかと、改めて自負しているところです。
*輪講:各人の持ち回りで行なわれる研究内容の討議会

Q.学部生に、研究室選び等について何かメッセージがあればお願いします。

A.大事なのは、「何を研究するか(研究内容)」ではなくて、「どう研究するか(研究の仕方)」です。皆さんが大学教育の中で身につけるべきことは、知識やスキルそのものというより、より効果的に知識・スキルを身につけるための思考・行動特性です。私も、研究内容についてはまるで忘れてしまったものの、そのやり方を通して身についた思考・行動特性は間違いなく、現在の糧になっています。皆さんも、長坂研で普遍的な差別化要素になりうる思考・行動特性を身につけてみませんか

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